「酔っ払った君は特に可愛かった」

My Hair is Badの「グッバイ・マイマリー」という失恋ソングが好きだ。

初めて「グッバイ・マイマリー」を知ったのは、帰省した際に妹が「この曲がいい」と紹介してくれたときだった。検索してみたらYouTubeでライブの動画を見つけて、その曲に惚れ込んだわたしはそれまで「真赤」しか知らなかったマイヘアを一気に好きになった。それから今に至るまで、ずっと聴いている。恋人がいたときも、彼と別れたあとも。


「グッバイ・マイマリー」は結婚したいと思っていた相手が二人で暮らしていた部屋を出ていった、という曲だ。その中でも特に好きな歌詞がある。

「酔っ払った君は特に可愛かった」。

この曲は元彼のことを思い出させる。付き合っていた期間は短かったけれど、すごく好きで、結婚したいとさえ思っていた元彼のことを。

その元彼と付き合っていたとき、一緒にお酒を飲んだ帰りに、酔った彼が突然わたしに抱きついてきたというエピソードを、この歌詞を聴く度に思い出す。


「酔っ払った君は特に可愛かった」という歌詞のポイントは、やはり「特に」という言葉にあろう。いつもいつも「可愛い」と思っていて、その中で酔っ払った君は殊更によかった、という気持ちに深い愛情が溢れている。


ではなぜ酔っ払った「君」が特に可愛いのであろうか。酔っ払うことで普段の可愛さが強調されるとも考えられるし、酔っ払うといつもは見られないような表情が見られるのかもしれない。人によるけれど、お酒にはふしぎな力がある。


わたしの場合だと、彼のことをいつもいつも可愛いと思っていた。付き合う前から可愛い人だと思っていたくらいだ、付き合ったらますます可愛く目に映るに違いなかった。そんな彼が酔っ払って何をするかというと、他でもない、わたしに抱きついてくるという形で愛情を示してくれた。彼の本当の気持ちを感じられた気がして、それが嬉しかったのだろう。別れたあとでもなんだか嫌いになれない大切な思い出だ。


でも、幸せな時間はそう長くは続かない。幸せは脆く儚いものだ。だからこそ美しい。

「首都高は僕らに見向きもせずに流れて  同じように季節も流れてた」。